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2010.05.01-02 焼岳~西穂独標

ucchiy,いちろー(記)

GW前半は中ノ湯から焼岳を登り,西穂を目指した。時間切れのため西穂登頂はならず。核心はトレースのない場所を進む勇気とルートファインディングといったところだろうか。ビバークも経験し,GWらしからぬ,人とほとんど会わない静かな山行だった。

4月30日金曜夜,慌ただしくパッキングを済ませて毎日アルペン号が待つ竹橋へ。荷物は余裕で20kg超。

5月1日5時過ぎに中ノ湯で放り出されるようにバスを下りると何と雪がちらついていた。ト伝の湯の管理小屋があるので水道くらいあるだろうと高を括っていたが,釜トンの横から放出している水を沸かす羽目に。冷たい風に身を縮めながら準備をして0600登山開始。
最初からもの凄い急登であえぎながら登っていると薄く雪の積もった石の上で足を横に滑らせて転倒。右膝を強打し,開始1時間でGW敗退かと一瞬目の前が真っ暗になったが,外傷はなく軽い打身で済んだ模様。
重荷と寝不足のためコースタイムにやや後れを取りながら進む。突然進路を横切るトレースが現れた。大きさは人間の足跡と似ているが形がちょっと違う。何と真新しいクマの足跡だった。ここからは頻繁に笛を鳴らしながら歩く。
足が雪に潜るようになったので,わかんとストックを装備。なんと歩きやすくなったことか。20cm足が潜るかどうかで疲れ方が全然違う。右手には明神や霞沢岳が美しい。
南峰と北峰の間の鞍部をめざしてどんどん高度を上げていくと,背後には乗鞍も見えてきた。鞍部ではかなり激しく噴煙が吹き出している。鞍部からはアイゼンに履き替えて,夏道が雪で埋まっているため噴煙の中北峰へ直登。

頂上からは360°の大展望。笠ヶ岳など飛騨側の山々や槍~穂高~明神,岳沢が一望のもとに。一通り景色を堪能して従走路に踏み出そうとしたのだが…道がない。
事前に西穂山荘に電話して従走路には冬季ほとんど人が入らないと聞いてはいたのだが…。地図を見ると,どうやら夏道は眼下に落ち込んでいく雪渓の下に埋もれているようだ。しかも雪渓の取付きにはシュルンドが大きく口を開けている。トレースの全くない一見ふかふかすべすべの雪渓とシュルンドに敗退の雰囲気が濃厚だったが,石を投げてもぐり方を見てみたところ,新雪はそんなに深くない。これで雪崩の危険性は低いと見えた。シュルンドをよくよく眺めてみると取付ける地点も見つかり,とりあえず雪渓を真上から観察してみる。傾斜の緩いところを選んでいけば何とか下りられるだろうと私は踏んだ。議論の末ucchiyさんを押し切り下降開始。
急なところは横向きに下りたり,もっと急なところは後ろ向きに下りたり。緩いところを目指してトラバースしたり。何とか下りきって雪に埋もれた焼岳小屋へ。振り返ると下ってきた斜面にトレースがくっきり。何だか随分急に見えるぞ??
時刻は1500。ここでテン泊という選択肢もあったのだが,無理なら途中ビバークすることを念頭に,西穂山荘のビールを目指して先へと進んだ。赤テープもなく道が全くわからないので,とりあえず尾根を目指して急登する。氷もあったのでわかんを再びアイゼンに履き替えて藪漕ぎ。藪があまりにひどいので道を探して降下。再びクマの足跡に遭遇しなが2229mのピークへ。
この写真の時点で1617。焼岳小屋~西穂山荘間の1/5ほどの行程で1時間以上を費やし,山荘までたどり着くことは困難に思えたが,後退するよりはもう少し進んでビバークすることに決定。夏のトラバース道が雪に埋もれているためであろう,ルートファインディングは困難を極め,ついにはロープを出して懸垂下降したり登り返したりしながら,ようやく割谷山頂付近に絶好のテントサイトを見つけた。時刻は1800頃。今日も12時間行動。
テントを張り,水用の雪を採取すると,笠の稜線の向こうに陽が沈んでいった。ビバークとは言うものの,装備に不足はなく快適なテン泊。涸沢の喧噪をよそに,同じGWの北アルプスとは思えないほどの静かな夜で,満天の星空も独占。

翌2日。まずは西穂山荘を目指す。
急斜面を下りることもあったが,山容は次第に穏やかに。まるで山ガールでも出てきそうな雰囲気さえ醸し出していたが,出てきたのはまたもクマの足跡だった。2時間ほどの行程かと思っていたが,結局4時間半かかり1200ごろ西穂山荘へ。時間的,体力的に西穂登頂は無理だったが,独標までは行くことにした。
足がパンプして息も絶え絶えだったが,最後に短いアイゼン岩登りを経て独標へ。岳沢,吊尾根,奥穂への従走路などなど360°の大展望。ロープウェイで新穂高に下りて,キャンプだけのために一路上高地へ。

贅沢だが,夕暮れの上高地も素晴らしかった。小梨平のキャンプ場も素晴らしかった。梓川のほとりにテントを張り,手に入れた豪華食材とビールで宴会。闇夜にうっすら浮かぶ岳沢と星空が美しかった。

こちらもご覧ください。
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焼岳への登り。噴煙が激しく立ち上る。 焼岳からの下り。まっさらな雪面に自分たちだけのトレースを刻む

 

焼岳からの下りその2。トラバース 焼岳を振り返ると下降路は随分と急峻に見えた。

 

ビバーク地点からの星空 西穂独標への登り

 

西穂独標からだけ沢を望む 梓川ほとりのテントサイトから

2010.03.27-28 甲斐駒ヶ岳黒戸尾根

ウッチー,いちろー(記)

ウッチーさんと新人同士で甲斐駒ヶ岳黒戸尾根に挑んできた。夏には登ったことがあったものの,冬の黒戸尾根は果たして我々の実力で登れるのかどうか疑問だったが,ダメならムリせず敗退しようと思いつつ山行に臨んだ。

前夜の終電で長坂駅へ0030着。
1時間ほどしか眠れなかったが,登山口である竹宇駒ヶ岳神社へタクシーで向かう。タクシーが遅れてきたのでクレームを付けたら料金は発生しなかった。ラッキー

0500登高開始。登山口は標高800m前後で雪は影も形もない。背後に見える八ヶ岳も黒々としており,雪なんてほとんど無いのでは?との楽観論もちらほら。徐々に高度を上げていくと目指す甲斐駒のピークが姿を現す。やはり真っ白だっ
た。横手への分岐を過ぎると左手には鳳凰三山や富士山も見えてくる。
1600mあたりから道は雪で覆われアイゼンを装着。樹林帯をだらだらと登り続けて刃渡りへ。さらに刀利天狗を過ぎて五合小屋跡へ。

準備運動はここでお終い。いよいよ急登が始まる。凍りついた急斜面にアイゼンを効かせながら登っていく。前爪への信頼は広沢寺で既に得ている。重心を足の真上に持って行くとアイゼンがよく効いてくれる。クライミングジムでのスラブ登りと全く一緒だ。クライミングと雪山とのつながりを初めて意識した。

1200頃に七丈小屋にたどり着き荷物をデポ。身軽になってから頂上アタック開始。八ヶ岳を背にして八合目へと登るとアサヨ峰の向こうから北岳が姿を現した。ここからは先は緊張の連続。リッジを渡り,急斜面を攀じ登り,岩を巻く。下りはロープを出さないと無理かもという場所もあった。

9合目からは更なる緊張の連続。ピッケルの石突きも刺さらないほどクラストした斜面を,先行パーティーが刻んでくれたステップを頼りに登る。ステップがなければ敗退かもしれなかった。滑り台のような斜面の登りとトラバースが連続する。滑落したら制動は困難だと思われた。

そしていよいよ登頂。神々しいまでに美しい山々の眺めをしばし堪能する。
森林限界を超えた場所の急降下は眼下に絶景が広がる。危ない場所も後ろ向きなら難なく下れた。壮大な滑り台をトラバースしたり,急斜面を下ったり,シビレっぱなしだが超快適だった。自信がついたのか感覚が麻痺したのか,登ったときには下れないかもと思った場所もロープを出すまでもなく安定して前向きに下りられた。実はこの場所で2週間前に滑落事故で人が亡くなっていたことを後で知らされた。

天候が崩れ始め,軽く地吹雪に晒されながら小屋へ到着した。ヘッ電は使わずに済んだ。まずはビールで乾杯し,チーズ鍋と共に夜は更けていった。

2日目は下るのみ。尾白の湯で汗を流し,帰路に就いた。

総括すると,これまでインドア,剱岳,アイゼントレ,西黒尾根の山行等でたたき込んでいただいた技術や経験を総動員して,スリルを味わいながらもギリギリ安全に快適に登高,下山を果たせたので,非常に有意義なレベルアップの機会となった。
ありがとうございました。

尾根の向こうに富士山が姿を見せた 5合目から甲斐駒を見上げる

 

難所が続く8合目からの道 鳳凰三山を振り返る

 

頂上で。かなりあやしい、「ふ・た・り」…。 頂上から鋸岳

 

天空の散歩 絶景の中を下る

2009.08.29 表銀座

研究室の人々を連れて軽~く縦走のつもりだったが,やはり槍はそんな生やさしい山ではなかった。さらに諸事情により共同装備をほぼ私が持つことになり20kgくらいの荷物を3日間背負い続けたのでかなりこたえた。

天気は良くはなかったが,行動中激しい雨に降られることもなく,景色もそこそこ見ることができた。東鎌尾根を歩いているときに北鎌尾根に雲がかかっていたのは残念だったが,槍の肩に泊まった夜は星空も眺められて長時間露光での撮影を楽しんだ。

8/29
0630 中房温泉
0940 合戦小屋
1100 燕山荘
1140 燕岳山頂
1540 大天荘
夕飯: 鰻丼,麻婆茄子

8/30
0630 大天荘
0930 ヒュッテ西岳
1320 槍の肩
夕飯: ハンバーグ,野菜スープ

8/31
0650 槍の肩
0850 槍平小屋
1230 新穂高温泉

燕岳は砂地でコマクサが群生していた。麓の波田町がスイカの産地なのも肯ける。ちなみに合戦小屋では1/8カットのスイカが800円で買える。あの場所であの甘さならかなりコストパフォーマンスは高いと思われる。

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砂地から岩が生えている燕岳山頂

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大天井岳への従走路から硫黄尾根。左に天井沢も見える。

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従走路から大天井岳。最後の登りが辛かった。

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大天荘テン場から槍・穂高

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大天井岳山頂から北鎌尾根

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東鎌尾根にはトリカブトが多く見られた

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3羽の雷鳥を一度に見たのは初めてかも

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チシマギキョウの群生@槍の肩

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槍の穂先

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30秒露光

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大喰岳に月

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30分露光

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あまりに星空が綺麗だったので穂先へナイトクライミングしてみた。
南側。穂高方面

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北鎌尾根

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頂上でビバークも辞さないつもりだったが,みるみるうちに空が曇ってきたので恐ろしくなってテントに逃げ戻った。下山中に月の暈が見えた。

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翌日。台風の影響か朝から雨だったが下るに連れて天気は回復。笠ヶ岳を西に眺めながら下山。

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2009.08.16-17 ジャンダルム

ichiro

天気の良い日を狙って奥穂~西穂の従走路に挑戦した。最小限の日数にするために,1日目に重太郎新道を白出沢のコルまで上がり,2日目に従走路を走破して下山することにした。
詳細は写真とともに。

16日
0630上高地
0830岳沢ヒュッテ跡
1045紀美子平
1130前穂山頂1200
1400奥穂山頂1540
1500穂高岳山荘

17日
0530 穂高岳山荘
0600 奥穂山頂 0615
0700 ジャンダルム
0830 天狗のコル
0850 天狗岳
1020 西穂高岳 1050
1320 ロープウェイ乗り場

上高地を出発。河童橋から焼岳が綺麗だった。 いつもと異なり河童橋を西穂側へと渡る。明神,前穂,奥穂が一望のもとに見渡せる。朝の上高地は何度訪れても素晴らしい。
岳沢への登山道に至るまでに素晴らしい景色に遭遇した。朝靄と朝日が織りなす光景にしばし心を奪われた。 岳沢から紀美子平までは重太郎新道を登る。5年前に下ったことはあったが登りは初めてだ。好天に恵まれ,眼下には上高地や焼岳そして乗鞍岳の眺めが広がる。

 

紀美子平からはザックを置いて空身で前穂頂上へ。 前穂頂上からは360°の絶景が広がる。前穂北尾根

 

明神岳 奥穂高岳~西穂高岳の縦走

 

そして槍~奥穂の縦走路と涸沢 紀美子平から吊尾根を奥穂へと歩く。振り返ると前穂北尾根の姿が凛々しい。

 

奥穂山頂からのジャンダルム 12. そして前穂と明神を振り返る

 

穂高岳山荘に着いて夕飯時には珍客が現れた。

 

小屋の裏から。夕刻の陽を浴びたジャンダルムの垂壁が圧倒的だ。 前穂北尾根を背景に本日の我が家。

 

夕暮れの白出沢ルート 夕暮れの前穂北尾根

 

17日朝。寝坊した。常念の肩からの日の出と涸沢の夜明けをテン場から望む まずは奥穂への登り。右手には朝日に照らされゆく笠が望まれる。

 

今日も天気は快晴で朝の眺望は最高。手前に前穂と明神,奥には南アルプスと八ヶ岳,さらに奥に富士山 上高地方面。右手に焼岳,左手に六百山,奥に乗鞍,さらに奥に御岳山

 

北方。涸沢岳,北穂,南岳,大喰岳そして天を突く槍。槍の後方左側には鷲羽,水晶,立山,右側には後立山。 さて,それではいよいよ西穂への稜線へと踏み出す。馬の背を行く人が見える。

 

いきなり最も難所と思われる馬の背が現れる。写真は馬の背からコルへの下り。落ちない方が身のためでしょう。 コルから馬の背を振り返る。フレークを足場にクライムダウンする。

 

奥穂山頂を振り返る。 眼前に迫るロバの耳。飛騨側は険しく切れ落ちている。急斜面を巻いたり信州側にのっこしたりしながら登っていく。

 

聳え立つジャンダルム。 私もクライマーの端くれなので,ジャンダルムへは奥穂側から直登した。初めは飛騨側の垂壁を登るのかと勘違いしてとても無理だと思っていたが,実際は写真 のピーク左側の大きな岩があるところを登った。残置スリングもあったが,お世話にならなくてもよく探すと奥の方にガバがあった。5.6くらいか?直登する ことで少し時間短縮できた。

 

ジャンダルムから来し方を振り返る。手前にロバの耳,奥に奥穂。

 

行く末。コブの頭,西穂。 槍はどこから見ても目を引く。

 

前穂と明神のシルエットが美しい。 コルからジャンダルムを振り返る。西穂側から見ると随分と印象が異なる。

 

天狗のコルへと下っていく。 天狗のコルを過ぎると後半戦。出だしからオーバーハング気味の岩場だったがガバだらけなので鎖のお世話にならずとも登れた。写真は天狗岳への最後の登り。

 

天狗岳山頂から笠ヶ岳 間天のコルで出会った雷鳥の親子

 

アップで 間ノ岳から急なガレ場を下りたりいくつものピークを越えたりしながらようやく西穂高山頂へ。

 

もうおしまいと思ったら大間違いで,ここからがとても長かった。西穂山頂を過ぎてすぐに水が底を尽き,山荘では1L200円をけちったために最後の1時間 は脱水が人体に及ぼす影響を人体実験する羽目に。とても辛いので水は多めに持った方がいいということを改めて思い知った。