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2015.06.20~21 裏比良 安曇川水系 白滝谷遡行他

記録を書くほどの山行でもないか、と思いながらだらだらとそのままに放置していたが
このままで放置しておくのも何となく気持ちが落ち着かないし
もしかしたら思い出しながら書くことでなんか新しい発見があるかもしれないような気にもなった。
それに、一応、何らかの形で総括しておかないと次の旅への踏ん切りがつかないような
一抹の居心地の悪さもある。

月に一度は、山で寝たい。と思っている。

出来合いのテン場ではなく
自分の感性がハマる場所で
独り
シンプルな幕を掛け
焚火の揺らぎを眺めながら
森の梵と水音に耳を洗い
ニッカの黒髭を舐める。

酔いの赴くままに眠り
白々と明ける頃目を覚ます。

そこで何をするわけではない。
無為を為しに行くわけだ。

それだけが目的なのだから、別に遠くの山である必要はない。
冒険の要素も必要ない。
歩いたことのない沢であればよい。

6月21日の日曜日はある岳友さんにヘク谷に誘われていた。
6月19日の段階で20日はまだ天気は持つが21日がかなり微妙な予報であった。
以前から20日~21日はどこか沢を絡めて山に寝に行こうと考えていたところで
ヘク谷へのお誘いは私の心をいづれにせよ比良に向かわせることになった。

20日/白滝谷→蓬莱山→小女郎が池→サカ下→ヘク谷出合で幕
21日/ヘク谷出合で合流→ヘク谷遡行→小女郎が池→サカ下→ヘク谷出合

みたいな感じで計画書は提出している。
21日決行するか否かは20日昼過ぎに決めるとの事前連絡があったので、その時点ならば
私は白滝谷を出てびわ湖バレイ付近のケータイの電波が入るあたりでウロウロしているはずだ。
21日の行動をどうするかは、それから変更すればよい。

白滝谷は非常に平易な沢であるが比良でも指折りの美渓と聞く。

【山行実施日】2015年6月20日~21日
【天候】曇り(20日)めっちゃ雨(21日早朝)。遡行開始時気温17℃
【メンバー】単独
【装備】フェルトソール・8x30mロープ
【ルート】
6月20日:坊村→牛コバ→牛コバ上林道終点(入渓)→白滝谷遡行→木戸峠→南比良峠→金糞峠
金糞峠下幕
6月21日:幕場→金糞峠→青ガレ下山→イン谷口
【行動時間】おぼえてません。

★6月20日
出町柳を出た7:45発、朽木学校行きのバスは8:41分に予定通り坊村のバス停に到着した。

バス停前でトイレを済ませ、今日は少し、余裕があるから明王院へ詣でてから山に入ることにする。

前々日からこちらは雨続きで、梅雨の晴れ間とはいえ水量が気になってはいたが
明王院の水位水勢は平水?であろう。

ときおり日差しもあり初夏の緑が空気を染める。
ゆるりと林道を歩き、甘露な湧水のお恵みもいただきながら

30分ほどで白クラを左に見る口ノ深谷出合

やがて奥ノ深谷出合を過ぎ牛コバを見送り

この先の林道終点付近で渓装束を整え、入渓する。

入渓後はしばらくゴーロが続く。

若干めんどくさいが思いのほか明るく開けた渓相で、まぁまぁな感じである。
小滝が出てくると、水の美しさが際立ち始め
無心に美渓の逍遥を楽しめるようになった。

ナメているが全般にフェルトソールのフリクションが効き歩きやすい。

例によって滝の順番は覚えていない。

2時間もせぬうちに、ひときわでかい滝にあたった。

一段目を上がり様子を見た。
水線右のリッジが使えそうと踏んだがヌメリがきつそう。
真ん中のから上がるリッジもありそうだがこの水勢では飛ばされてしまうな・・・・
巻きを探したがおそらく右岸巻きだろう。
しかし右岸もまだ新しい土砂崩れがあり、かなり水を含んでいて悪そうだ。

少し戻って沢沿いの登山道に上がり大巻きして沢に戻ろうと考えた。

アジサイのにぎやかな登山道を鼻歌交じりにぷらぷらと上がっていくうちに
わざわざ沢に戻るのも面倒になってきた。

おりよか、どーしよっか

考えながら歩いているうちに
夫婦滝まで巻いてしまっていた笑
落ち口を登山道から。

まぁいいや。別に滝を上りに来たわけじゃない。

そろそろケータイの電波も届くようになり、連絡がある。
21日は天気芳しからず、中止とのことである。

さて、ヘク谷は中止になったし明日はどのみち沢はナシで行程を考え直そう。
クリンソウに相談しよう。

今夜は、いづれにせよ、山で寝る。
それは決めている。

できれば人の気配のない場所で独り。

先月奥ノ深谷を遡行したときに見つけた源流部の森を思い出した。
そうか。あそこに行こう。
あそこで寝て、次の日は武奈ヶ岳~釣瓶岳~ワンゲル道で降りよう。

木戸峠へ向かいそこから南比良縦走路を北上することにした。

天気のせいだろうか。結局金糞峠までは1組、5~6人のハイカーにしか行き会わなかった。
静かな森歩きを楽しむ

金糞峠から西に下り、いわゆるテン場を過ぎて2回ほど渡渉する。
ほどなくして、前回あたりをつけていた適地が左岸にみえた。

装備を解き、幕を掛け、薪を集める。
薪は豊富にあったが水をかなり吸っているのでなかなか火が育たない。
それでも何とか、メシを炊き味噌汁を作るくらいは続いた。
寒くはないのだが火が心もとないのは惜しい限りだ。

ともあれ
こんな天気の日に、こんな辺鄙なところで一夜を過ごす物好きはほかに居ないようで
素晴らしく、清冽な夜だ。
メシを済ませ
いつもの夜の友 ニッカの黒髭を
ミックスナッツをかじりながら飲る。

暗くなる。
心地よく酔いが巡る。
ユニクロのダウンを着て、シュラフカバーに潜ると

いつの間にか落ちて行った。

★6月21日

白み始めた朝の4時
数発の雷鳴に目を覚まされる。

ほどなく雨が森を叩き始め、大粒の雨がバケツをひっくり返したように降り注ぐのに
時間を要しなかった。
昨夜の残り飯をモッサリ食いながら
ブルーシートの下で雨脚が収まるのを2時間ほど待ったが
一向にその気配すらない。

幕場下の谷筋は轟音を立てている。

この分では、当初予定していた牛コバ方面への下山は
渡渉点が濁流に水没しているだろうしまず無理だろう。
金糞峠から最短距離で青ガレを下ってイン谷口に下山するのがよろしかろうと
雨にたたかれながら撤収し東へ向かった。

峠の直下で若者の一団がなにやら地形図を広げている。
関西学院高等部のワンゲルさん。

武奈ヶ岳へ行く予定とか。
まだ雷が遠ざかっていないので稜線を行くのは危険だ、ということでワサビ平へのルート
で一旦様子を見て上がるとのこと。

がんばれよ。リーダー、頼もしいね。
おっさんはね、「山で寝る」って当初の目的は果たしたんで
さっさと帰りますわ。

で、川みたいになったルンゼを東に直降。

青ガレに差し掛かる。
雨脚はいまだ強く、ばたばたという雨音の間から
『カラン、カラン』という
石の転がる乾いた音が追いかけてくる。
あまり気持ちのいいものではない。

でもお前さんは、うれしいだろうね。

大山口まで降りてくると、やっとこさ雨脚が収まってきた。

イン谷口の分岐まで来ると上からタイミングよく比良駅へ行くバスが降りてきた。

比良駅で下車し、電車の待ち時間の間、西口にある食堂で
冷えた体を温めさせてもらう。

なんとなく始まった山行を締めくくるにふさわしい
なんてことないエピローグの中で

この食堂のその日唯一のフードメニューである
カップヌードルをすすりながら
店を切り盛りするばぁさんととりとめない会話を交わし
ゆっくりと現世に心を馴染ませた。

店を出ると
里には、初夏のまぶしい日差しが戻っていた。

2015.05.30 裏比良 安曇川水系 奥ノ深谷遡行

この記録を書いている5月31日は、当初の予定なら地元の岳友さんに誘われて大峰の前鬼川本流
に行っているはずであったのだが、31日の予報が芳しくなく30日に前倒しとのご連絡があり
30日はPM18:00にやんごとなき所用を控えた中で、残念ながら直前辞退した。
とはいえ前回のGW以来沢に入っておらず、とにかく近場でも沢に行こうと考え、
アクセスその他を考え合わせると『30日・裏比良』との選択肢となった。

以前から中間的な自己評価をここでかけようと考えていた沢が2つ、候補にあり、
それが安曇川水系明王谷に流れ込む二つの沢『口ノ深』と『奥ノ深』であった。
時間に余裕があるとはいえ遡行時間の少し長い『口ノ深』は今回は避け
『奥ノ深』に狙いを定めたのは29日の朝のことである。
メジャーな沢だけに記録も多いが、その中でも特に
『美しい広葉樹林に彩られた、裏比良らしからぬ明るい沢』との文言に
いたく心ひかれたのである。

とはいえ、そんなのどかな紹介の片方で『十九の滝』と異名をとる
数多くの滝をかけた沢である。
はたしてどうなることやら。

【山行実施日】2015年5月30日
【天候】晴れ。遡行開始時気温23℃

【メンバー】単独

【装備】フェルトソール・8x30mロープ

【ルート】坊村、明王院より林道をたどりすぐの駐車場Co330に駐車。
林道を辿りCo443にて入渓。
Co700、登山道渡渉地点にて遡行終了
以降沢沿いに辿り大橋分岐より金糞峠→南比良縦走路にて
南比良峠→大橋分岐→遡行終了点より牛コバへ。

 

→駐車場Co330

【行動時間】8時間(休憩込)

AM05:00 大阪は八尾の自宅を車で出発。下道をつなぐ。
R170~R1~R367にて京都市内から大原経由で
AM07:20 滋賀県葛川坊村のキャンプ場を左対岸に見るとすぐに右手に
『明王院』入り口の看板。ここを入り、まずは
地主神社に参詣、山行の無事を祈念する。
近くのきれいな公衆トイレで軽量化を済ませ、
車をさらに少し林道の奥まで運び左手の駐車場に止めて支度をする。

AM08:05 支度を終えて、のろくさと林道を歩き始める。

20分も歩くと、本流の三の滝への降り口に出会う。

少し先へ行くと、三の滝の水源の一つとなる湧水が、水場として右手に出てきた。
一口掬う。ウマイ。柔らかく、甘い味がする。
甘露だ。まさに甘露。

伊藤新道の出合を右手に見れば、シロクラを左手に控えた口ノ深谷の分岐は近い。

シロクラの壁がそびえた口ノ深谷出合で
若い単独行者が谷への入り口を探していた。

更に五分ほど歩みを進め白滝谷を右から合わせる二本目の橋を渡った左手に奥ノ深谷の
降り口がかなりわかりやすく踏まれている。

写真左手奥には沢床から1.5m程高くなった平らな台地があり、幕適地となる。

AM08:50

いつものように、上流に二礼二拍手一礼して入渓
『山の神様、本日も一日、遊ばせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。』

しばらくはゴーロかな・・・・と歩みを進めると早速滝場が始まる。
テンポが速い。

降雨が少なかったとはいえ十分に水量もあり水勢もある。
小さな滝も立派な釜を持っており、ブナやナラやクヌギの葉を通して
明るい陽光が碧水を輝かせる。

とにかく忙しい。滝また滝。

もう何がどの滝だかワケワカラン笑ので
写真は順番テケトーです!!

4つ目か5つ目か、まあそんなあたりで出てきたこの7~8m程の滝。
高巻きで落ち口の高さあたりで浅いルンゼのトラバースがあるのだが
見てくれのいやらしさを嫌って上に上がっていくうちに
次の連瀑の2段目テラスまで巻き上がってしまった。
持ってきたのをこれ幸いとハンマーバイルを使いながら
ひやひやのクライムダウンで高度を戻したが
しょっぱさを感じたのはこのくらいであった。

この高巻きが終了したところで下を見ると、男女2人のパーティが4段滝の1段目を上ってくるところ
であった。
その後、この三重県から来られたYさんパーティーとは抜きつぬかれつ、
時折言葉を交わしながらのんびり遡行することになる。

滝→滝→滝→滝→滝→滝→滝→滝→滝→滝→滝→滝→・・・・・・・・・以下略

と、傾斜が弛んだところで前方に沢を横切るトラロープが。
はたしてここが遡行終了点だった。

Yさんパーティはここで装備解除して降りるようだ。

私はまたいずこかの沢での再会を約し この先の本流筋をさらに詰め金糞峠へ向かう。

この谷の、最初の一滴を見たい。

遡行終了点から大橋分岐へ歩みを進める。

平凡な緩やかな流れとなった谷は、明るい林の中をゆったりと流れてゆく。

両岸は程よい高さの台地状で明るく開け、土木工事の必要がないくらいに
そのまんま幕適地がより取り見取り。ここはよい!!乾いた枯れ木も事欠かない。

大橋分岐付近で、崩れた作業小屋の跡。

ほどなく金糞峠下の幕営地に。

杉の植林も交じるこの辺は、火のまわりやすい杉の枯れ枝が多くたき火は禁止だ。

ここからものの3分で金糞峠。

峠の地名に敬意を表し

カレーパンを喰らう。

そそくさと補給を終わらせ、装備を整理しなおしてから
縦走路を外れ西面の谷筋を辿り、水切れを探すと

このあたりで地面からしみだしが出てきている状況を確認した。
陽の光を浴びる最初の一滴。
進路を東の凹面に求め、縦走路に乗り上げて南比良峠を目指す。

南比良峠

小休止の後、大橋分岐方面へ西に転じる。
峠のすぐ下には、気持ち良い草原が広がり
2つほど、神座と思しき巨石が鎮座する。

30分足らずで大橋分岐。
そして再び遡行終了点から、今度は牛コバへの急な下りの登山道を下り

1時間少しで牛コバの林道終点へ降り立った。


距離・時間ともに遡行だけを見ると短いものではあったが、様々な要素が
凝縮した充実感のある遡行であった。
中級と目される沢で比較的自分の思い描いた通りに諸般こなせ、
今後につながる収穫のある山行であった。

無事に帰れたことを改めて山の神様に感謝。

入渓点で再び二礼二拍手一拝。

『山の神様、今日も一日、ありがとうございました。』

 

2015.05.05~05.06 大峰 川迫川水系 神童子谷~犬取谷遡行

【携帯水没】

しました。
いろいろ撮ってた写真が全部見れなくなっちゃいまして。
無念です。

それゆえ今回の遡行記録は写真のない、まったく文字だけの記録になってしまいます。
現場での新緑と大峰ブルーの瑞々しさを表せるはずもなくパサパサな記録になっちゃいますが
ご了承ください。

【山行実施日】2015年5月5日 ~5月6日
【天候】5月5日・・・快晴
5月6日・・・朝のうち快晴、午後より薄曇り

【メンバー】単独

【装備】フェルトソール・8x30mロープ

【ルート】1日目:大川口~(神童子林道)~終点入渓⇒レンゲ辻谷出合幕営(15:00)
2日目:レンゲ辻谷出合~山上ノ辻(稲村小屋)⇒洞川温泉(13:00)
【行動時間】12時間(休憩・釣り込)

①1日目

朝6時に妻に最寄りのJR駅まで送ってもらい天王寺下車。
近鉄の阿部野橋より吉野行き急行(06:50発)で下市口に08:02着。
日曜祝日のみで洞川温泉行きの季節運航の臨時急行バスが08:20発。
急行に途中から続々と乗ってきた登山客と思しき乗客は案の定下市口駅で
大挙して降車し、先を争うようにバス停へ向かう。
幸いに前から10番目くらいの乗車順につけて並ぶことができた。
朝から快晴。前日は一時的に天気のぐずつきがあったが、予報、天気図では
5,6日共に大陸からの高気圧の張り出しに覆われ安定した好天が確実だったため
憂いない山行になりそう。晴天の元の大峰ブルーに否が応でも期待は高まる。
問題は天川川合からのアプローチで、公共交通機関はなく、天川村に1台しかない村のタクシーを
使わなければ

(予約できんとのこと。予約のできるタクシーは吉野とか大淀から回送の為アホみたいに高くつく)

A)自前のアンヨで3時間ちょいひたすら歩く
B)おそらくバス停で待ち構えている天川タクシーに相乗りキボンヌルで潜り込む
※これはその車が、R309でみたらい渓谷より向こうへ行く客を乗せる予定であることが
前提となる。
C)テクテク歩いている途中でに背後から行者還トンネル方面へ行く車を見つけヒッチハイクする。

の3つの選択肢がある。計画書はA)の時間計画で出してはいるが、こんなスカッ晴れで風の弱い日に
カンカン照りのお日様に向かって歩き続けるのはナンボ修行の山といってもなるべくご勘弁願いたい。
しかも舗装道歩き。

バスに揺られ揺られて50分ほど。
まぁ何とかなるやろ、と楽天的に考えていた。
バス停に着くとやはりタクシーはバス停で待ち構えていた。
3人の学生さんが行者還トンネル西口まで乗るとのことでワリカン相乗り決定!
ラッキー!これで2時間半は余裕が出る。
車は20分ほどで大川口についた。ワリカン分を学生さんに渡し車を降りると
眼下の川迫川本流にはフライマンたちがあちこちに入渓している。
水量が少ないようだ。
GWに入ってからまとまった降水がないとか。
さて、とりあえずここから40分ほどの林道歩き。
路肩には5~6台ほどの釣師と思しき車が駐車されている。
新緑のまぶしい林道は、ところどころ補修され歩きやすくはなっている。
思えば昨年の8月にここにきてアプローチ敗退した時の林道の状況はすさまじかった。
台風一過の翌々日で前夜天川温泉の駐車場で車中泊したが夜中も激しい雨が一時降っていた。
早朝に雨も上がり大川口から林道に入ると、路肩の崩壊、落石が道幅を狭め、愛車が軽のワンボックス
で良かったと思いつつさらにオソゴヤ谷出合の橋を渡りかけたところでついに1車線のみの道路が
路肩崩壊で0.5車線となり万事窮す。しゃーない、少し戻って脇に止めて徒歩で林道詰めて入渓すっか・・・と思ったその目の前に
左岸の絶壁から落石がおっこってきて、青くなって鬼バックで逃げ帰ってきたトラウマロードである。

今日は微風快晴の元、新緑の芽吹きと涼やかな沢音を愛でながらの散歩道。
まこと快適。
歩き始めて40分ほどで林道終点となる関電測量所についた。
この先の橋の下から入渓してみる。広い河原に腰かけて眼前の大峰ブルーの水に目を細める。
いや、ブルーというより、限りなくコバルト。
石灰岩と花崗岩に磨かれた澄み渡った水。
車両通行止めということもありここまではまだ釣り師も入っていないようで
アマゴが盛んにライズしている。沢支度もそこそこにテンカラを引っ張り出して
ここで小一時間も遊んでしまった。あれだけライズしていたが、22㎝を1尾抜いただけ。
腕ですな・・・・・
さて、そんなこんなで気づくと11時。計画よりも早く入渓できたとはいえ
あんまり遊んでいては押してしまうだろう。
初めてのルートで何があるか予測がつかない。余裕をもって行動開始。

沢支度を整えてよいこらしょっとザックを担・・・ぐ前に
いつもの儀式。

上流に向かい2礼2拍手1拝。

『山の神様、今日明日、遊ばせて頂きます。なにとぞよろしくお願い申し上げます』

①で、いきなり淵。
(あとから遡行図を見たらこれはトガ淵といい、通常は左岸に途中までつけられている
関電の巡視用桟道を使って巻くらしい)
右岸に取り付いてへつろうか左岸でへつろうか観察したが、右岸に取り付くのも一発泳ぐようだ。
左岸の足元は見るからに滑りそうな磨かれたナメ状。これは泳ぎしかあるまいと
腹を決めてザックのベルトを外し片担ぎにして泳いだが・・・・・
うーん。。。。。
重くて進まんwww
何度か押し問答やってるうちに途中で先の方の左岸に伸びている桟道を発見。

なんだよ(笑

てなわけで戻ったとこの左岸の浅い谷筋にかかる桟道に乗り込んでさっくり巻いた。
とりあえず桟道がどこまで続くか見てみようと歩いたが、トガ淵を巻いた先50mほどのところで
崩壊しており降りれない。仕方なく少し戻った斜面から再び入渓。

しばらくは魚影の濃いアマゴを追い立てながら足を進める。

②まもなく谷は右へ曲がりゴルジュ『へっついさん』が現れた。
最近の情報では淵をかなり砂利が埋めていて浅くなっているとのことにてそのつもりで
入り込んでみると胸までの水位がある。きいてないよw
流れはゆったりしているし、足元まできれいに見えるから不安感はなかったが。
一発目の泳ぎ、そして胸まで渡渉でたっぷり水につかった。
既に雪代は消えているとはいえ、やはりそこは深山幽谷の大峰。
冷たい。とにかく冷たい。

③谷は再び左への展開を匂わせたがその入り口に落差5mほどのナメ滝が
不気味な縦渦を深そうな淵に落としながら佇んでいる。
手前からナメ滝の右岸に乗り越さねばならないが、そこへ渡るには3mほどの
わずかな泳ぎを入れねばならない。
意を決してなるべく対岸に近いところまで勢い付けていけるように飛び込んだ。
ザックの重みが一瞬効いて鼻まで沈んだがすぐに浮き上がり対岸の滑りやすい
壁に手がかかる。わたり切った先はこれもナメているが足場があり、そこを絡めて
ボルダーチックにマントル返しながら滝をずり上がる。
スローパーなホールドをきわどくプッシュしながら滝上に出ると乗り越した上の右岸にトラロープが張ってあった。
あるものは、使う主義です。

④やれやれよ。としばらくはゆったり水線漫歩していくつか小滝を超えると
高い側壁の出口あたりに噂の赤鍋の滝が見えた。
左岸をへつり登る。
広い釜の左岸を腰までつかってへつりながら、左上する手がかり足がかりを探る。
微妙な凹みと乾いた面にじんわり乗り込み、フリクションをじっくり効かせながらの歩み。
手を伸ばすと確かに浅いクラックが左上しており、手がかりとしては素直にコイツ
を使えばよいが、足は相変わらず悪い。滑ったら手がかりはバランス程度の浅さなので
間違いなく滑り落ちてドボンだろう。
半分まで上がったところで残置ハーケンが見えた。
シュリンゲを掛けて大股で乾いた縦のジェードルにある足場に左足親指だけで乗り込む。
これだけで姿勢がかなり安定してそのまま上に行くラインが見えた。
あとはスリップに注意しながらシュリンゲをはずし、上へ。

ふぅっと、一息。
周囲は疎林で仮に撤退するとなれば滝上にハーケン打って残置しなければ降りれないだろうな。
となると、さっきのナメ滝の下降も含めるとハーケンもある程度枚数いるだろう。
単独では撤退の難しいところまできた。
ここから先は、とにかく上り詰めるのが最も安全ということになろう。

⑤釜滝。このすぐ上で谷は犬取谷(左)とノウナシ谷(右)に分ける。13:00

言葉が見つからない。直径2~30m以上あろうか。広い釜に落差8mほどで2条になり
滔滔と落ちる水は木漏れ日の下で釜の中にあそび、陽光の強弱に合わせるかのように
色を変えてゆく。
どこまでも澄み渡る静かな淵の中には尺はあろうかというアマゴが悠々と何匹も遊んでいる。
ここ。この光景を見るためだけに、この谷に来た。といっても過言ではない。
まさしく『桃源郷』とは、この目の前の光景のためにある言葉なんだ。
桃源郷。ここは桃源郷。

言葉にならぬ美しさを収めようとケータイを取り出した時
初めてただならぬ事態に気付いた。
ジップロックに水がたっぽんたっぽん入ってますwww

ジッパー、あいてました(爆

うん。で、予想通り
うんともすんとも言わぬ。

しばらくフリーズしたのは未だ5月初旬の泳ぎの為ではありません。

そして私は、こう考えることにした。
今日、初めてここにきて、文句ない好天のもと
これだけ素晴らしい光景に出合えたのは、山の神様のお導きだと。
そして山の神様はこう言ったのだ。
『あんなー、アレやねんけどなー、今日は特別にめっちゃエエもんジブンだけ見せたるさけ、
ほんま特別やで。せやからなー、こっから先のことは写真とか撮らんと、ジブンの胸にしっかり焼き付けぇや。他のモンは見たかったら頑張ってココきたらええねん。』

そうです。そうですよね、神様。
ひよっこ沢ヤ、頑張って独りでここまで来ました。
ご褒美なんですよね。うん。
ほんまありがとうございます。

でもね、一つだけ、いいっすか?
こっから先とおっしゃいますが
ここまでのデータも全部アジャパー(古ッ)っすわ・・・・

おいちゃん、悲しいからアマゴちゃんと遊ばせて頂きましょう。
テンカラをふりふり。
ふりふり
ふりふり
ふりふり
ふり・・・
ふ・・・・・・・

一時間、体がすっかり乾くまで粘ったが
遊んでくれたアマゴちゃんは1尾だけ。
腕悪い。

今年はマヂで釣り修行の入渓をメインにしたくなった。

とはいえ、今回は遡行で峰越えが目的。
小一時間遊ばせて頂いた釜滝に2礼2拍手1拝。
左岸から小巻に上がって釜滝を辞した。

しばらく平凡な渓相の中を進む。
陽は高く、新緑を透けてこぼれてくる光が空気をグリーンに染める。
ゴーロに生した苔と相まって、緑の海を泳いでいるかのようだ。

ほどなく
⑥奥の狭まった廊下の先に一ノ滝が現れた。
廊下の水位は深そうだ。ヘツリ泳ぎで取り付くことはできるだろうが
なんの迷いもなく左岸小巻一択。

⑦一ノ滝より落差のある二ノ滝。
左岸巻き。巻きルート自体は簡単なのだが、意外と高度感があるうえ
まださほど今シーズンは踏まれてないだろう、落ち葉の堆積が
足場をいやらしくしている。一歩一歩、落ち葉をどかしながら慎重に足を進める。
キョウイチで緊張しただろうか。

⑧幕場
巻き終えると歩きにくいゴーロが続いており
少し先に左岸から入るレンゲ辻谷を合わせる広い河原があった。
このすぐ上まで偵察したところ、2mほどの小滝を越えたすぐ上の左岸に
万一の逃げ場になる緩斜面を控えた、ちょうど一張り分の広間があり、沢床よりも1mほど
高くなっている。上流側に巨岩が鎮座しており沢嵐もある程度回避できそうな理想的な状態だった。
早速にタープを張る。軽く土木工事をした広間に
コーナンで買ったブルーシートを『瀬畑式』で設営する。
張り縄は太めのジュート紐Byコーナン。
快適すぎる。やばい。ホテルだホテル。
さて、薪。
数日間雨の少ない状態で、周囲に散らばる倒木や枝は乾いている。
しかも豊富だ。焚火でいうところの『ご神木』もころあいのものがあった。
ホテルの前にうずたかく積み上げ、下流側で火を焚き始める。
ジュートをばらした物を着火剤にしてあっさり着火。乾いた小枝は勢いよく燃え始める。
この調子で夜明けまで火を絶やすことなく、温かく過ごした。
暗くなる前に、米を炊き、みそ汁を作る。
メシは、シンプルで良い。余計なものは、なくてよい。
家から持ってきた米は目の細かい洗濯ネットに移し替え擦るように研ぐ。
便利だ。乾燥キクラゲを戻し蕗と共に軽く湯がき味噌を入れる。
1尾だけ、確保しといたアマゴに塩をして焼く。

やがて夜のとばりは降りた。
食後の酒を。ニッカ黒ひげの小瓶。
ふたを開け、ふたになみなみと最初の一杯を注ぎ、上流に向かって捧げる。
そして、焚火を眺めながら、少しずつ、なめる様に楽しむ。

何も、考えない。
目を閉じる。
どこからか、篠笛が聞こえる。
シカの鳴き声ではない。すこし低く、メロディーになっている。

当然、稜線の遥か下の谷底。そんなものが聞こえようはずがないのだが、私には聞こえた。
幻聴かもしれないが、それでも良い。
不思議と、怖さはない。
いや、むしろ、ほほえましくさえ感じた。

神童子が、来たんだな。

そう思った。

⑨二日目
明け方4時過ぎると東向きの谷は新しい一日の気配をうすい靄の中に漂わせ始めた。
熟睡した。
焚火の熾きに小枝をついで火を起こす。
ホテル『ブルーシート』を解体し、畳む。切り落としたジュート紐と柱を火にくべる。
昨夜の残り飯をみそ汁に突っ込みクツクツと煮る。
軽い朝食でしっかり腹も満ちた。

昨夜聞こえたあの篠笛の音を思い出しながらパッキングをする。
燃えかかっている物は、すべて燃やし尽くす。白い灰になるまで。
茶を飲み、クソをする。

ゆるりとクソをたれながら見上げる空は、靄がだんだんに晴れ、
今日も良い天気だ。

穴を掘り、落ち葉と共にクソを埋める。
俺の分身はやがて木々の冬枯れの分身と渾然一体となり
生命の輪廻に再び分け入るのだ。

AM06:05
行動開始。ゆるっと行こう。

⑩20分ほど犬取滝に出合う。
行く手を遮る20m以上の直瀑。
周りを高い壁に囲まれ、その壁の切れ目からどうどうと流れ落ちる神の路。

右岸を巻く。
落ち葉に覆われた泥付の急斜面を、まばらな灌木とチェーンスパイクを頼りに
上り詰めると落ち口のチョイ下くらいの高さで険しい側壁に阻まれ、巻戻される。
尾根を狙ってトラバース気味に巻き上がる。
側壁が切れたところで、下流の右岸に合わさる急峻なガレルンゼの側壁の上に出る。
下に切れ落ちた右壁と行く手を阻む左壁の間を注意深く進むと左の壁が切れて
尾根を上流側に抜ける。落ち口15m位上のところでコンタを読み、斜面を観察しながら
モンキー気味にザレ交じりの斜面をおりる。

少しづつ傾斜の上がって来ているゴーロの谷筋を、浮き岩に注意しながら歩を進める

⑪ジョレンの滝は、もう目の前にあった。
落差合計60m。左岸に20mほどの雫滝を従えたその神々しいまでの雄姿は
旅のフィナーレを飾るにできすぎなほどドラマチックであった。
3段に分かれているのだろうか?最上段の落ち口は見上げた遥か頭上から
まるで紺碧の空を割って水をほとばしらせているかのようだ。

ただただ、言葉無く、手を合わせ、この白銀の昇り竜を拝んだ。

昨夜の神童子は、この竜の背を滑り降りて遊びにきたに違いない。

⑫旅の終わり
ジョレンの滝も右岸を大高巻きする。
犬取滝といいこの滝といい、今シーズンはまだあまり踏まれていない巻道は
落ち葉に埋もれている。たまに枯れたようなテープをみつけ、それらしい踏み跡を見ることが
できたが、基本それも途中ですぐに見えなくなり完全に現場ルーファイになる。
そう難しくないが喘ぐような急登りを大きく巻き越えたその先で水は徐々に細くなる。
滝上で09:40。
少々時間を食ってしまったが、ここからはさしたる困難もなさそうなので
改めて気を引き締めて詰めに入る。
簡単な小滝が連続する、大樹に彩られた原生林を逍遥する。
やがて、両側の尾根の斜面に熊笹とシャクナゲが見え始めると源流の旅は終焉を迎える。
Co1500あたりから適当に左側の尾根に乗り、熊笹のゆるい斜面を歩くと
ひょっこりと稲村小屋の横に飛び出した。
AM10:30

安堵の溜息は、山上辻を渡る風に乗り、神すまう山並に消えていった。

PM13:00
洞川温泉に下山

山行終了。

 

2015.04.26 裏比良 安曇川水系 ヘク谷遡行

【山行実施日】2015年4月26日
【天候】朝のうち曇りのち晴れ。遡行開始時気温8℃
【メンバー】Chanko 単独
【装備】フェルトソール・8x30mロープ
【ルート】安曇川 坂下集落下流対岸より入渓~ヘク谷遡行~小女郎が池(遡行終了)
~サカ谷道より下山~サカ谷出合より坂下集落
【行動時間】7時間(休憩込)
AM04:30  大阪は八尾の自宅を車で出発。下道をつなぐ。
R170~R1~R367にて京都市内から大原経由で
AM07:00  坂下トンネル北口下の駐車地へ。
駐車地からすぐ対岸にこれから遡行するヘク谷を望む。

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手前を右から左に流れ下る本流にはすでに数人の釣師が入っている。
放流直後のアマゴやイワナもようやっとこなれてきたのか食い気が立ってきたと
私の横に車を止めた釣師が話していた。テンカラを忘れてきてしまったことが悔やまれる。
この時点での気温は6℃。まだ西面に陽がささず、いますこし暖かくなるのを待とうかと
釣師とダベりながら沢支度を整える。

AM07:50 入渓。
駐車地から少し下手に土手を下り、ひざ下までの渡渉で出合にはいる。

少し上手で一人の釣師が20㎝弱のアマゴをかけた。
きれいなパーマークのはいった別嬪さん。
そろそろ数がでるよ!と話していた。くそー。うらやましい。

谷には釣師は入っていないようです。

まずはいつもの通り

谷の上流に向かい
2礼2拍手1礼。

『山の神様、一日、遊ばせていただきます。どうか安全に遡行できますよう、御見守りください』

いざ、遡行開始!

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しばらくはゴーロの目立つ緩斜面だがほどなく傾斜が付き始めるとサクサク登れる
小滝が引きも切らずに現れて少々忙しいが楽しい。
ときおり腿上まで水につかりながら積極的に水線をたどる。
水はさすがにまだ冷たい。
と、本格的な滝が現れる。

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10mあるかないか。流れの左から取り付き、水線にスタンスを求めながら登る。
この上から本格的に5m前後の滝が続き対応に忙しい。
夢中でこなしてるもんだから数なんかわからない。
今回はそもそも遡行図(トポ)は持たずに地形図と現場でのルーファイでこなそうという
肚であったのだが、遡行図があったところでコレではなんのこっちゃ却ってわからんだろう。

やがて少し大きな滝が現れる。

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左の岩の陰に回り込み、張り出した岩の下をくぐりながら水線左より取り付く。

このあたりから水勢がかなり強く、突っ込んだ上半身を容赦なくたたきつけ、
ヌメリの顕著になってきた岩肌と相まってなかなか厳しい。
とりあえず真ん中すぎまで上がってみたが

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黒光り。

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爆風を感じる。

クライムダウンできるところまでであきらめて、巻を選択した。
少し戻ってから高度計を確認、地形図のコンタと突き合わせる。
滝の周囲を見ると、『コレだ!!』という感じではないのだが、右岸に低い灌木のつながりがある
急斜面がある。上は小尾根のようになっており、こいつを谷側に回り込むか少し山側から
乗ッ越すかで行けそうだと判断する。
モンキークライムで落ち口の高さまで上がってみたが、谷へのトラバースが脆そうな垂壁に阻まれておりよくない。左をみやると傾斜はそのままだが少し上が開けた状態になっており、
乗ッ越しをしたほうがまだよさそうだ。
登ってきた斜面を振り返る。

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そのまま5mほどあがり小尾根を乗り越すと、この先も下のほうで傾斜を増した疎林の斜面。 落ち葉が斜面を埋めており灌木の間隔が広く、下降に良好とはいえない。 もとより今回のロープで1ピッチで処理できる高さでもないので、この斜面を横切る 細い生木を捕まえて渡りながら沢床との距離を詰めることにした。2本よりあった木に体を持たせ念のためセルフをとり、チェーンスパイクを装着、
ザックからバイルを外した。

 

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地形図を広げ現在地同定。トラバースした先でほどなく沢床との距離は20mを切るようだ。
眼下に沢筋は見えないが、左右から瀑布の音が聞こえる。
巻いた滝のすぐ後に同じ規模ほどの滝があるようだ。
聞こえる感覚からすると、後続する滝も巻くことになるだろうが、いたしかたない。

慎重にトラバースし、小尾根の向こうに出ると、沢床がかなり近づいている。
やはりいま乗っている尾根でそこそこの滝を巻いたようだ。

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この先トラバースを続けていても不明瞭なことと、スグ下の安定した沢床まで切れ落ちてはいるが
ロープの届く距離だろうということで頭上の木にロープをかけて末端を結び放り投げる。
セルフをとって覗き込むと、下から1m程の所で足りなくはなっているが行けそうだ。

降りてきた壁を見上げる。

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ロープをたたんで小休止としよう。

 

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手を洗い、顔を洗い、清冽な沢水を手に掬い喉を鳴らす。
沢筋を水に乗って滑り落ちてくる淡い緑の臭いに、獣の臭いが交じり
命の躍動する季節が始まっていることを改めて感じる。

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さて、沢音を愛でながら、歩みを進めよう。

やがて現れた滝はおそらくこの谷最大の18mだろう。

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ここは左岸のルンゼから取り付き、落ち口の高さでトラバース。

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難しくはないが、泥の中に脆い岩が隠れているので慎重に。

落ち口の上は渓相がしばし穏やかになり

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ちょっとしたナメをヒタヒタと進む

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傾斜も緩み、地形図上は分岐を間違えなければ悪い場所はこの先はない。

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水が少しずつ細くなると、ほぼ1:1で谷は本流を左に分ける。
二股には朽ち果てた林業小屋があり、生活の跡が打ち捨てられていた。

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兵どもが夢のあと

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右股はやがて水も細くなり、フィナーレへの心の準備を促すかのように

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更に、左から暗いルンゼを合わせたすぐ上で再び二股。

小女郎が池への径は右股だ。
水はすぐに枯れ、難しくはないがめんどくさい枯れ棚が出る。
このあたりだけ、岩に不思議な流紋があった。

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空が、近くなってきている。

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枯れ棚を越えると一気に空が開け、そこは芽吹きを待つ緩やかな疎林帯であった。

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ここにはまだ冬の残り香がある。

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いきなり『ポン』と飛び出した先に
静かに水をたたえた小女郎が池があった。

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12:45 遡行完了

池の傍を巡り、蓬莱山や小女郎峠から集まるハイカーでにぎわう広場の対岸で腰を下ろす。

京都北山の山並みは薄い春霞に。

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ぽかぽかとした陽気に思わずまどろんでしまった。
13:30、下山を開始する。

遡ったヘク谷の南に延びる坂下尾根を辿るサカ谷道を使う。
おそらく使う人もまばらなのだろう。荒れてもいない代わりに
踏まれてもいない感じだが、決して不明瞭ではない。
Co1010付近で左手にサカ谷左股への下降点が顕著にわかる。

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途中に傾斜のほとんどない広い台地があり、絶好の泊場を提供している。

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空が開けている。適度な間隔の樹木が風を遮り、開けた空は快晴の夜なら
プラネタリウムが楽しめるだろうな。
たき火はできないが、一度泊まってみたいものだ。

広場のはずれで小休止。

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下山開始してから1時間程で道は尾根から谷間へ下り、サカ谷に沿う。

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堰堤を4つやり過ごすと目の前に坂下集落への橋が現れた。
15:00 下山完了。
谷に向かって、手を合わせ、深く礼をする。

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さすがに釣師のみなさんももう去っていた。

本日も、無事に下山いたしました。

山の神様、ありがとうございました。

比良山、よいではないか。
安曇川は、近くて良い水。

 

http://gorgemantommy.muragon.com/entry/2.html