2015.09.19~09.22 大峰 北山川水系前鬼川孔雀又谷右俣遡行~明星ヶ岳(後編)

アメシ谷下の右岸に張ったツェルトの下で目覚めると既に下手の幕場にビバークしていた
4人パーティの炊煙が立っていた。6時半。

のそっと起き出して焚火の燠を起こす。

昨夜の残りメシに味噌を放り込み、沢水でゆるくして雑炊のようにして温める。

梅干しをしゃぶりながらもそもそ食べていると、下のパーティが

「おさきに」と上がっていった。

ツェルトをたたみながら見上げた空は高曇り。

風はない。

暑くも寒くもない快適な気温。

ツェルトとシュラフをたたんでザックに押し込み、まだ冷たい靴下を

焚火にあてて温めているうちに、マットの上で寝入ってしまった。

再び目が覚めたのは8時(笑)

こりゃさすがにいかんな。

こんどはそそくさと荷をまとめ、装束を整えて出かける。

いくつかの小滝をやりすごしながら進むと谷の両岸はやがて高い嵓が目立ち始め
大きな滝の予感を漂わせる。

15mないが、なかなかに立派な滝が行く手をふさいだ。
滝身左手のブッシュのコンタクトラインを登れなくもないが
右岸にすぐ階段状のルンゼが落ちているので、狭いとこ好きな私は
迷わずこのルンゼを登って巻く。

続いて、20mほどはある立ったナメ滝

滝身周辺は手が付けられないので、これまた右岸のルンゼに活路を求める。
このルンゼは落ち口チョイ下くらいの高さで右手からガレを入れている。
このガレに転じてから小尾根のようになった地形を乗り越すと、容易に滝上に出た。
緩い斜面にミズナラやブナ、ヒメシャラが茂る明るい林。

右手に見える沢床は傾斜を増して巨石が積み重なっている。
重荷背負ってボルダーをウロウロするのも煩わしく、巻いたままの斜面を
トラバースしながら高度を上げてゆくことにした。

階段状30mに差し掛かる手前で谷は伏流の様相を見せ始める。
ここで、詰めに備えペチャポリに水を満たす。
やがて見えた階段状30mは快適。

ぬめりにだけ気を付けながらワシワシと登ってゆくと
規模の大きな崩壊地に飛び出す。
右岸からも左岸からもかなり大規模にガレが押し出してきている。

日が差してきて白い岩肌に反射する。暑いくらいだ。
最後に40mが見えた時には少し日が陰ってきていた。
この滝は「枯滝」とガイドブックに書かれていたが

あれ?

しみ出し以上に水が流れている。

乾いたリッジ状を選んで登る。先ほどより少し立っているが、手足豊富。

最後は水枯れを確認し、左岸の尾根からさらにもう一つ向こうの尾根に
トラバースし、

退渓、詰めに入る。
ふか、ふか、とした苔が足に優しい・・・・

ひと登りして12:30、孔雀岳北の稜線上、奥駆道に抜けた。

霧が濃くなっている。風は緩やかで、かえってこの霧を幽玄に漂わせる演出
まずは1本立てる。旨い。

大休止しながら装束を解き、トレッキングシューズに履き替える。
さて。
本当は昼前にここに抜けて今夜は狼平、と決めていたのだが
時間も2時間押し、それに意外と疲れてしまったのと、なんだか股ズレが痛くて
そんなこんなでかなりめんどくさくなったので
時間は早いが、ここから北に一番近い楊子ヶ宿小屋で泊に予定を変更することにした。

14:30に到着した小屋は非常にきれいな小屋であった。
私が入った時には先行は1名。この小屋と行者、狼平らの3つの無人小屋を
ボランティアで月に一度整備して回っている横田さんが入っておられた。
やがて三々五々と登山者が集まってきた。

単独者同士の静かな語らいと、鹿の鳴き声、ろうそくの炎のかすかな揺らぎ。
小キジを撃ちに外に出ると、雲が切れた空は張り詰めた空気をまとい
漆黒のスクリーンに満天の星をちりばめていた。

流れ星、ひとつ、ふたつ。

残った酒を干しシュラフに潜り込む。

夜が明けた。

昨日の時点で、今日、明星ヶ岳から天川河合に降りる腹で居たので
朝をまったりと過ごすことにした。

宿泊者はそれぞれに小屋を後にする。

お世話になった同宿の方々と。

ありがとうございました。

私は少し残って、預かったごみを小屋前のファイヤープレイスで燃やして処理する役を
買って出た。

朝露がさわやかに輝いてるうちに稜線を歩き出す。

七面山南壁が見える。

秋の空は高いなぁ。

お。迷平

明星ケ岳手前で東側からガスが上がってきた。

ガスで眺望がないことを嫌う人も多いだろうが
私はガスあってこその大峰だと思っている。
てか、ガスのない大峰なんて、大峰じゃない。

明星ヶ岳を西側から巻き、弥山辻からよく整備されたレンゲ道を
ゆるゆると下る。
奥駆道が修験の道であるなら、このレンゲ道はかつてこの背骨のような山脈を
横断する生活の道であった。

シラビソの南限となる学術的に貴重な樹林帯でそうです。

標高を下げると、どこか人懐かしい雑木林の趣に。

山道はやがて崩壊した坪ノ内林道に沿って下り
門前山から一気に河合の集落に駆け下る。
役場の上手の橋を渡り

短い旅は、終わった。

洞川温泉に立ち寄り、旅の垢を落とした後

アメノウオで旅の余韻に浸った。

大峰の奥深さに、しみじみ、魅了された旅となった。

山の神様

ありがとうございます。

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