2015.06.20~21 裏比良 安曇川水系 白滝谷遡行他

記録を書くほどの山行でもないか、と思いながらだらだらとそのままに放置していたが
このままで放置しておくのも何となく気持ちが落ち着かないし
もしかしたら思い出しながら書くことでなんか新しい発見があるかもしれないような気にもなった。
それに、一応、何らかの形で総括しておかないと次の旅への踏ん切りがつかないような
一抹の居心地の悪さもある。

月に一度は、山で寝たい。と思っている。

出来合いのテン場ではなく
自分の感性がハマる場所で
独り
シンプルな幕を掛け
焚火の揺らぎを眺めながら
森の梵と水音に耳を洗い
ニッカの黒髭を舐める。

酔いの赴くままに眠り
白々と明ける頃目を覚ます。

そこで何をするわけではない。
無為を為しに行くわけだ。

それだけが目的なのだから、別に遠くの山である必要はない。
冒険の要素も必要ない。
歩いたことのない沢であればよい。

6月21日の日曜日はある岳友さんにヘク谷に誘われていた。
6月19日の段階で20日はまだ天気は持つが21日がかなり微妙な予報であった。
以前から20日~21日はどこか沢を絡めて山に寝に行こうと考えていたところで
ヘク谷へのお誘いは私の心をいづれにせよ比良に向かわせることになった。

20日/白滝谷→蓬莱山→小女郎が池→サカ下→ヘク谷出合で幕
21日/ヘク谷出合で合流→ヘク谷遡行→小女郎が池→サカ下→ヘク谷出合

みたいな感じで計画書は提出している。
21日決行するか否かは20日昼過ぎに決めるとの事前連絡があったので、その時点ならば
私は白滝谷を出てびわ湖バレイ付近のケータイの電波が入るあたりでウロウロしているはずだ。
21日の行動をどうするかは、それから変更すればよい。

白滝谷は非常に平易な沢であるが比良でも指折りの美渓と聞く。

【山行実施日】2015年6月20日~21日
【天候】曇り(20日)めっちゃ雨(21日早朝)。遡行開始時気温17℃
【メンバー】単独
【装備】フェルトソール・8x30mロープ
【ルート】
6月20日:坊村→牛コバ→牛コバ上林道終点(入渓)→白滝谷遡行→木戸峠→南比良峠→金糞峠
金糞峠下幕
6月21日:幕場→金糞峠→青ガレ下山→イン谷口
【行動時間】おぼえてません。

★6月20日
出町柳を出た7:45発、朽木学校行きのバスは8:41分に予定通り坊村のバス停に到着した。

バス停前でトイレを済ませ、今日は少し、余裕があるから明王院へ詣でてから山に入ることにする。

前々日からこちらは雨続きで、梅雨の晴れ間とはいえ水量が気になってはいたが
明王院の水位水勢は平水?であろう。

ときおり日差しもあり初夏の緑が空気を染める。
ゆるりと林道を歩き、甘露な湧水のお恵みもいただきながら

30分ほどで白クラを左に見る口ノ深谷出合

やがて奥ノ深谷出合を過ぎ牛コバを見送り

この先の林道終点付近で渓装束を整え、入渓する。

入渓後はしばらくゴーロが続く。

若干めんどくさいが思いのほか明るく開けた渓相で、まぁまぁな感じである。
小滝が出てくると、水の美しさが際立ち始め
無心に美渓の逍遥を楽しめるようになった。

ナメているが全般にフェルトソールのフリクションが効き歩きやすい。

例によって滝の順番は覚えていない。

2時間もせぬうちに、ひときわでかい滝にあたった。

一段目を上がり様子を見た。
水線右のリッジが使えそうと踏んだがヌメリがきつそう。
真ん中のから上がるリッジもありそうだがこの水勢では飛ばされてしまうな・・・・
巻きを探したがおそらく右岸巻きだろう。
しかし右岸もまだ新しい土砂崩れがあり、かなり水を含んでいて悪そうだ。

少し戻って沢沿いの登山道に上がり大巻きして沢に戻ろうと考えた。

アジサイのにぎやかな登山道を鼻歌交じりにぷらぷらと上がっていくうちに
わざわざ沢に戻るのも面倒になってきた。

おりよか、どーしよっか

考えながら歩いているうちに
夫婦滝まで巻いてしまっていた笑
落ち口を登山道から。

まぁいいや。別に滝を上りに来たわけじゃない。

そろそろケータイの電波も届くようになり、連絡がある。
21日は天気芳しからず、中止とのことである。

さて、ヘク谷は中止になったし明日はどのみち沢はナシで行程を考え直そう。
クリンソウに相談しよう。

今夜は、いづれにせよ、山で寝る。
それは決めている。

できれば人の気配のない場所で独り。

先月奥ノ深谷を遡行したときに見つけた源流部の森を思い出した。
そうか。あそこに行こう。
あそこで寝て、次の日は武奈ヶ岳~釣瓶岳~ワンゲル道で降りよう。

木戸峠へ向かいそこから南比良縦走路を北上することにした。

天気のせいだろうか。結局金糞峠までは1組、5~6人のハイカーにしか行き会わなかった。
静かな森歩きを楽しむ

金糞峠から西に下り、いわゆるテン場を過ぎて2回ほど渡渉する。
ほどなくして、前回あたりをつけていた適地が左岸にみえた。

装備を解き、幕を掛け、薪を集める。
薪は豊富にあったが水をかなり吸っているのでなかなか火が育たない。
それでも何とか、メシを炊き味噌汁を作るくらいは続いた。
寒くはないのだが火が心もとないのは惜しい限りだ。

ともあれ
こんな天気の日に、こんな辺鄙なところで一夜を過ごす物好きはほかに居ないようで
素晴らしく、清冽な夜だ。
メシを済ませ
いつもの夜の友 ニッカの黒髭を
ミックスナッツをかじりながら飲る。

暗くなる。
心地よく酔いが巡る。
ユニクロのダウンを着て、シュラフカバーに潜ると

いつの間にか落ちて行った。

★6月21日

白み始めた朝の4時
数発の雷鳴に目を覚まされる。

ほどなく雨が森を叩き始め、大粒の雨がバケツをひっくり返したように降り注ぐのに
時間を要しなかった。
昨夜の残り飯をモッサリ食いながら
ブルーシートの下で雨脚が収まるのを2時間ほど待ったが
一向にその気配すらない。

幕場下の谷筋は轟音を立てている。

この分では、当初予定していた牛コバ方面への下山は
渡渉点が濁流に水没しているだろうしまず無理だろう。
金糞峠から最短距離で青ガレを下ってイン谷口に下山するのがよろしかろうと
雨にたたかれながら撤収し東へ向かった。

峠の直下で若者の一団がなにやら地形図を広げている。
関西学院高等部のワンゲルさん。

武奈ヶ岳へ行く予定とか。
まだ雷が遠ざかっていないので稜線を行くのは危険だ、ということでワサビ平へのルート
で一旦様子を見て上がるとのこと。

がんばれよ。リーダー、頼もしいね。
おっさんはね、「山で寝る」って当初の目的は果たしたんで
さっさと帰りますわ。

で、川みたいになったルンゼを東に直降。

青ガレに差し掛かる。
雨脚はいまだ強く、ばたばたという雨音の間から
『カラン、カラン』という
石の転がる乾いた音が追いかけてくる。
あまり気持ちのいいものではない。

でもお前さんは、うれしいだろうね。

大山口まで降りてくると、やっとこさ雨脚が収まってきた。

イン谷口の分岐まで来ると上からタイミングよく比良駅へ行くバスが降りてきた。

比良駅で下車し、電車の待ち時間の間、西口にある食堂で
冷えた体を温めさせてもらう。

なんとなく始まった山行を締めくくるにふさわしい
なんてことないエピローグの中で

この食堂のその日唯一のフードメニューである
カップヌードルをすすりながら
店を切り盛りするばぁさんととりとめない会話を交わし
ゆっくりと現世に心を馴染ませた。

店を出ると
里には、初夏のまぶしい日差しが戻っていた。

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