2010.09.03-04 北岳バットレス 第4尾根

登攀自体は易しいものでしたが、初の若手のみでのアルパインクライミングであ
り、多くの経験が得られました。

9/3(金)
0930 甲府駅発
1130 広河原
1400 白根御池
~1700 偵察
2000 就寝

9/4(土)
0215 起床
0315 出発
0500 bガリー大滝取付
0550 登攀開始
0720 cガリーへの懸垂下降
0820 2P目終了点
0850 4P目終了点
0920 マッチ箱のピーク(5P目終了点)
1030 7P目終了点
1130 北岳山頂
1330 白根御池
1600 広河原

4尾根へ取付くには①bガリー大滝を登ってトラバース、②dガリー大滝、③第5尾根支稜を登るという3つの方法がある。二股から八本歯のコルへ至る登山道から右手に逸れ、①ではバットレス沢を、②③ではC沢とD沢の間を登る。本で調べた段階では③の予定だったが、偵察したところバットレス沢を登るルートが鮮明だったため、①のルートをとることに決定した。

翌日,まずはbガリー大滝2Pをつるべで登る。とても簡単だった。
その後は横断バンドをトラバースするはずだったのだが、誤ってbガリーを左上してしまった。ザレザレで岩も脆く緊張を強いられたがフリーソロで切り抜け、cガリーへ懸垂下降。

取付きへ至るIV級のスラブから再びロープを結んで登る。Mローさんのリードでスタートし、この後すべてつるべ。
取付きからの1P目(V-)は私がリード。出だしのクラックがちょっと悪く、迷わずA0。(どうやら正規のルートより左側を登ってしまったみたいだが。)
3P目白い岩のクラック(III)。
5P目、核心?の垂壁(V)を越え、マッチ箱のピークへと至る。
ピークから10m懸垂した後、2Pで枯れ木テラスへ。7P目は右のライン(V-)を登る。最終ピッチは易しいスラブを左上して終了。八本歯からの登山道に合流して頂上へと至る。

バットレス沢末端の大岩後方にbガリー大滝。写真中央左の樹木の上がcガ
リーと4尾根。マッチ箱のピークが顕著。cガリー奥が中央稜。
bガリーから第3尾根懸垂地点へのガレた登り

 

3P目白い岩のクラック(III)を登るMローさん マッチ箱のピークを背に7P目を登る

 

枯れ木テラスからは威圧的な中央稜の姿に圧倒される。ハング帯のすぐ上に
クライマーが2人いる。
感動の登頂

2010.08.06-08 前穂 4 峰正面壁北条・新村ルート

日本を代表するクラシックルートの一つであるという前穂4峰正面壁 北条・新村ルートを、
wさんに連れられて登攀してきました。

アプローチの悪さといい、アブミの掛け換えによる垂壁のトラバースといい、何度か本気で死ぬかもと思いました。本気アルパインの恐ろしさを思い知らされたと共に、また新たな領域に足を踏み入れてしまった気がします。

8/5(水)
22時 八王子発、26時 沢渡着
軽く飲んで仮眠

8/6(木)
0600 起床、タクシーに相乗りして上高地へ
0800 上高地発
1430 涸沢着
2000 就寝

8/7(金)
0400 起床
0500 涸沢発
0630 5・6のコル
0825 C沢下部
1145 北条・新村ルート取付
1215 登攀開始
1330 ハイマツテラス
1430 核心のトラバース開始
1830 終了点
1900 北尾根縦走路へ
2000 5峰ピーク(ヘッ電点灯)
2130 涸沢着

8/8(土)
0700 起床
0800 朝酒
1000 涸沢発
1530 上高地

8/6(木)
この日は涸沢まで歩くだけなので比較的遅く起床し、ドイツ人の親子連れとタクシーを相乗りして上高地へ。旦那は重太郎新道を日帰りでピストンするとのことだった。

重荷を背負ってひたすら涸沢を目指す。天気は上々で徳沢~横尾間では左手に目指す4峰正面壁がくっきりと見えていた。このときは認識していなかったのだが、写真中央左の巨大な雪渓がC沢で、その右上のやや陰になっている岸壁が4峰正面壁。(写真1)

横尾から本谷橋方面へ分岐すると、登山者が随分と減った。多くの人が槍を目指すのだろうか?3週間前の北鎌のときとは逆だ。
屏風岩が次第にその姿を現す。来年には挑戦できるだけの実力を身に付けたいものだ。

涸沢へ到着して、やっぱりまずはビール。その後友人の所属する○和山岳会のテントにお邪魔した後就寝。お世話になりました。

8/7(金)
朝はこの上なくいい天気だった。
軽い朝食とパッキングを済ませて5・6のコルを目指す。(写真2)

北尾根の稜線が近づいてくると雪渓の傾斜もだんだんと急になってくる。
振り返ると涸沢カールの大パノラマ。(写真3)

5・6のコルへ到着すると、雲が急速に湧き上がってきた。最初は奥又白の池が見えていたが、次第に視界が悪くなってきた。C沢から正面壁上部が見えないとアプローチのルートファインディングが困難とのことから、一旦は北尾根縦走に計画を変更した

ところが5・6のコルから1分も進むと視界が良くなったので、北尾根は私でもリードしていけるとのことだし、ダメ元でC沢まで行ってみることに。
コルから奥又側への下りが悪い。基本的にガレ。人があまり入っていないのでその程度は甚だしい。トラバース道が崩落していたりして、写真の箇所ではロープを出した。(写真4)

ザレ場のクライムダウンは恐ろしい。とにかく手も足もまともなホールドがほとんど無いのでだましだまし降りていくしかない。転落したらかすり傷くらいでは済まないだろう。ここが生命の危機を感じた箇所その1。。。(写真5)

喘ぎ喘ぎガレた道を下ってC沢にたどり着くと、4峰正面壁はガスの中だった(゜Д゜;)。。。予想はしていたのだが。。。(写真6)

このまま踵を返しても涸沢で昼間っから飲んだくれるしかないので、奥又白の池まで散策することに。すると、道に迷ったりしている間に正面壁がきれいに見えてきた。
そこで、天候が悪化したら引き返すという選択肢を残しつつもアタック決定。C沢を詰める。(写真7)

C沢の上端からシュルンドを越えて岩に取付く。ここからルートの取付までは非常に悪く、写真を撮る余裕も全く無かった。クラックに沿って登ると上部がボロボロだったり、とにかくザレガレともろいホールドの連続。そんなところをフリーソロで登るのだから緊張感は尋常ではなかった。

靴を履き替えアンザイレンして、いざルートへ取付く。最初の4Pは易しい凹角を右上していく。(写真8)

ハイマツテラスからが北・新ルートの核心。まずはオーバーハングをアブミを使って越えていく。(写真9)

そして次のピッチは垂壁のトラバース。ささくれかけた残置スリングにアブミを掛けながら進む。まさにロシアンルーレットだ。
ビレイヤーの足場もそんなに広くない。そしてこの高度感((((;゜Д゜)))
ハーケンの間隔がかなり広いので、アブミの掛け換えは困難を極めた。
はたして自分がランナーを回収しながら進むことができるのか甚だ心配だった。

この間、空は晴れたり曇ったり。時にはガスが我々を覆ったり、遠くで雷鳴が聞こえたり、雨粒を手に感じたりして、ルートの困難さと相まって不安が募った。

さあ次は私の番。まずはアブミでのトラバース。これまでハング壁でアブミの練習をしたことはあったが、どうやら垂壁の方が難しい。レストの体勢が安定しないのだ。そして次の支点が遠い。さらに次のアブミに乗り移った後にその前のアブミとランナーを回収するのがまたまた大変。そんなことをやっているうちに全身の筋肉が悲鳴をあげてくる・・・。フイフイやヌンチャクでぶら下がると今度はハーネスが腰に食い込んで痛い。まさに八方塞で絶体絶命。そのうちwさんからは“救助呼ぼうか~?”との声まで。

もがきにもがき、足掻きに足掻き、最後はメインロープにマッシャーをかまして体を次の支点に引き寄せ何とかアブミをかける。結局スリングを1本回収できなかったが、ほうほうの体でアブミから解放された。しばらくは安定したホールドに恵まれてさらにトラバース。

ところが、である。これで終わらないのがこのピッチ。終了点は間近に見えているのだが、一見スタンスがない。またアブミかよ~、と泣きそうになっているとwさんから1段下りたところに足場があるとのアドバイスが。見ると、100mは切れ落ちている断崖に5cm程の岩角が出ている。崩れるかもしれないという恐怖心と戦いながら祈るような気持ちでその小さな出っ張りに乗り移り、何とかこのピッチをクリア。本当に寿命が縮まった。

核心は抜けたが次のピッチも決して易しくはない。心身共に疲労困憊した状態で、右上するクラックに沿って登っていく。ハイマツテラス以降吸水もできておらず、緊張も手伝って喉はカラカラ。ただひたすら早く終わってくれと願いながら登る。

最終ピッチを終えて一安心。吸水し、靴を履き替え、ロープとガチャを仕舞い、帰路へ就く。時間が時間だっただけにビバークも覚悟していたが、ヘッ電をつけて北尾根とコルからの雪渓を下り、ふらふらになりながら涸沢へ。疲労のあまり仰向けにひっくり返ると空一面の星が目に染みた。北尾根沿いに流れた特大の流星は天からの労いだったのかも。

8/8(土)
当初予定していた滝谷ドーム中央稜の登攀は中止。
朝一からビールとおでんで昨日果たせなかった乾杯を果たして下山。

徳沢-横尾間から見上げる前穂北尾根 涸沢から5・6のコルへ

 

涸沢カール 5・6のコルから奥又側への下り

 

ガレ場のクライムダウン 正面壁はガスで覆われていた

 

C沢を詰める 最初の易しいピッチ

 

.アブミを使ってハングを越える トラバースのピッチのビレイ地点

 

アブミを使ったトラバース こんなの自分にできるんだろうか??

2010.05.16 三つ峠

参加者:W,U,I,M

最初は右フェースの一般ルート。
全員で一度上まで行く予定が、ちょっとした事でMは下で留守番することに。
3人が降りてくる間に、他の人達の動きを見て勉強していると大きな落岩が。
幸い、ケガ人はなかったが下にいた全員が肝を冷やした。ジムクライミングとの違い、リスクを再確認した。

3人が降りてきたあとは、場所を移してトップロープでの
地蔵ルート左 (Ⅴ-)
地蔵ルート右 (Ⅴ)
地蔵ルート右は最初と最後が難しく若手3人はそれぞれ違うムーブで攻略し、渡邉先生に採点してもらった。

最後は、もう一度一般ルート右(Ⅲ)から上を目指すことに。今回はIさんのリード。
又平は2ndに入ったが、ロープがからんでしまい上手く送り出せず確保に手こずり、ロープワークも含めもっと勉強と経験をしなくてはいけないと痛感。

4P目、第3バンドから左へ歩いた権兵衛チムニー(IV) からはWさんのリード。
私は岩に挟んだ身体をズリズリと上げていくような、ムーブとは言えない動きで攻略。他の人も手こずった様子。

昼過ぎからは雲が出て、あいにく富士山の絶景は見れなかった
が夕方までじっくり登って充実した内容でした。

三ツ峠全景 午前中の富士

 

一般ルート右 地蔵ルート右

 

権兵衛チムニー

2010.05.03-05 鹿島槍ヶ岳 東尾根

参加者:W,U,I,M

5月3日
11:00 信濃大町駅で集合
12:00 大谷原登山口
林道を歩いた後に、東尾根へと取付き。急登で順調に高度を上げて一の沢の頭を経て
17:00頃に二の沢の頭の少し手前で幕営。

5月4日
02:30起床
04:50出発
二の沢の頭を経て、雪面のトラバースと急登が続く。
07:00第1岩峰へ取り付き。手順も含め、登攀に時間を食う。
10:00第2岩峰取り付き。確保されている安心感もあり特に問題なし。しかし、同じく時間はかかった。
逆に、この後のナイフリッジは恐怖となる。
「いま横から突風が吹いたら」「足元の雪が崩れたら」と思うと仕事中以上に腰が低くなった。

12:30北峰着。
握手と写真と食事を済ませた後、出発。
ひたすら雪壁を登り13:40南峰着。
冷池山荘へ向けて(ビールへ向けて)下降開始。
16:00頃、山荘着。
極寒の受付でとにもかくにもビールを飲んだあと幕営。U、Iの両名は4日目のテン泊。
温かい布団を選んだ渡邉さんの部屋へお邪魔した後早めに就寝。

5月5日
何だかんだで7:40出発。赤岩尾根の下降を開始。
剱岳やら踏破した東尾根を見る度に写真タイムとなる。
雪壁もナイフリッジもない尾根だったが雪の落とし穴があちこちにあり、仲良く全員一度は落ちるハメに。
12:00大谷原着。無事下山。
恒例のお風呂で身体を癒した後、帰宅。

痩せた稜線上では各自、間隔を空けて進む。 痩せた稜線上では各自、間隔を空けて進む。

 

大町の夜景。 第一岩峰

 

第二岩峰に取り付くWさん 第二岩峰登攀後。北峰へ向けてもう一息…

 

ナイフリッジ。落ちても「命は」残るそうです。 北峰着

 

南峰着 3日目。快晴の中、剱岳を望む。

 

そこかしこに「雪の落とし穴」が。 l無事下山。全員で握手を。

2010.05.01-02 焼岳~西穂独標

ucchiy,いちろー(記)

GW前半は中ノ湯から焼岳を登り,西穂を目指した。時間切れのため西穂登頂はならず。核心はトレースのない場所を進む勇気とルートファインディングといったところだろうか。ビバークも経験し,GWらしからぬ,人とほとんど会わない静かな山行だった。

4月30日金曜夜,慌ただしくパッキングを済ませて毎日アルペン号が待つ竹橋へ。荷物は余裕で20kg超。

5月1日5時過ぎに中ノ湯で放り出されるようにバスを下りると何と雪がちらついていた。ト伝の湯の管理小屋があるので水道くらいあるだろうと高を括っていたが,釜トンの横から放出している水を沸かす羽目に。冷たい風に身を縮めながら準備をして0600登山開始。
最初からもの凄い急登であえぎながら登っていると薄く雪の積もった石の上で足を横に滑らせて転倒。右膝を強打し,開始1時間でGW敗退かと一瞬目の前が真っ暗になったが,外傷はなく軽い打身で済んだ模様。
重荷と寝不足のためコースタイムにやや後れを取りながら進む。突然進路を横切るトレースが現れた。大きさは人間の足跡と似ているが形がちょっと違う。何と真新しいクマの足跡だった。ここからは頻繁に笛を鳴らしながら歩く。
足が雪に潜るようになったので,わかんとストックを装備。なんと歩きやすくなったことか。20cm足が潜るかどうかで疲れ方が全然違う。右手には明神や霞沢岳が美しい。
南峰と北峰の間の鞍部をめざしてどんどん高度を上げていくと,背後には乗鞍も見えてきた。鞍部ではかなり激しく噴煙が吹き出している。鞍部からはアイゼンに履き替えて,夏道が雪で埋まっているため噴煙の中北峰へ直登。

頂上からは360°の大展望。笠ヶ岳など飛騨側の山々や槍~穂高~明神,岳沢が一望のもとに。一通り景色を堪能して従走路に踏み出そうとしたのだが…道がない。
事前に西穂山荘に電話して従走路には冬季ほとんど人が入らないと聞いてはいたのだが…。地図を見ると,どうやら夏道は眼下に落ち込んでいく雪渓の下に埋もれているようだ。しかも雪渓の取付きにはシュルンドが大きく口を開けている。トレースの全くない一見ふかふかすべすべの雪渓とシュルンドに敗退の雰囲気が濃厚だったが,石を投げてもぐり方を見てみたところ,新雪はそんなに深くない。これで雪崩の危険性は低いと見えた。シュルンドをよくよく眺めてみると取付ける地点も見つかり,とりあえず雪渓を真上から観察してみる。傾斜の緩いところを選んでいけば何とか下りられるだろうと私は踏んだ。議論の末ucchiyさんを押し切り下降開始。
急なところは横向きに下りたり,もっと急なところは後ろ向きに下りたり。緩いところを目指してトラバースしたり。何とか下りきって雪に埋もれた焼岳小屋へ。振り返ると下ってきた斜面にトレースがくっきり。何だか随分急に見えるぞ??
時刻は1500。ここでテン泊という選択肢もあったのだが,無理なら途中ビバークすることを念頭に,西穂山荘のビールを目指して先へと進んだ。赤テープもなく道が全くわからないので,とりあえず尾根を目指して急登する。氷もあったのでわかんを再びアイゼンに履き替えて藪漕ぎ。藪があまりにひどいので道を探して降下。再びクマの足跡に遭遇しなが2229mのピークへ。
この写真の時点で1617。焼岳小屋~西穂山荘間の1/5ほどの行程で1時間以上を費やし,山荘までたどり着くことは困難に思えたが,後退するよりはもう少し進んでビバークすることに決定。夏のトラバース道が雪に埋もれているためであろう,ルートファインディングは困難を極め,ついにはロープを出して懸垂下降したり登り返したりしながら,ようやく割谷山頂付近に絶好のテントサイトを見つけた。時刻は1800頃。今日も12時間行動。
テントを張り,水用の雪を採取すると,笠の稜線の向こうに陽が沈んでいった。ビバークとは言うものの,装備に不足はなく快適なテン泊。涸沢の喧噪をよそに,同じGWの北アルプスとは思えないほどの静かな夜で,満天の星空も独占。

翌2日。まずは西穂山荘を目指す。
急斜面を下りることもあったが,山容は次第に穏やかに。まるで山ガールでも出てきそうな雰囲気さえ醸し出していたが,出てきたのはまたもクマの足跡だった。2時間ほどの行程かと思っていたが,結局4時間半かかり1200ごろ西穂山荘へ。時間的,体力的に西穂登頂は無理だったが,独標までは行くことにした。
足がパンプして息も絶え絶えだったが,最後に短いアイゼン岩登りを経て独標へ。岳沢,吊尾根,奥穂への従走路などなど360°の大展望。ロープウェイで新穂高に下りて,キャンプだけのために一路上高地へ。

贅沢だが,夕暮れの上高地も素晴らしかった。小梨平のキャンプ場も素晴らしかった。梓川のほとりにテントを張り,手に入れた豪華食材とビールで宴会。闇夜にうっすら浮かぶ岳沢と星空が美しかった。

こちらもご覧ください。
ichiroの部屋

焼岳への登り。噴煙が激しく立ち上る。 焼岳からの下り。まっさらな雪面に自分たちだけのトレースを刻む

 

焼岳からの下りその2。トラバース 焼岳を振り返ると下降路は随分と急峻に見えた。

 

ビバーク地点からの星空 西穂独標への登り

 

西穂独標からだけ沢を望む 梓川ほとりのテントサイトから

2010.03.27-28 甲斐駒ヶ岳黒戸尾根

ウッチー,いちろー(記)

ウッチーさんと新人同士で甲斐駒ヶ岳黒戸尾根に挑んできた。夏には登ったことがあったものの,冬の黒戸尾根は果たして我々の実力で登れるのかどうか疑問だったが,ダメならムリせず敗退しようと思いつつ山行に臨んだ。

前夜の終電で長坂駅へ0030着。
1時間ほどしか眠れなかったが,登山口である竹宇駒ヶ岳神社へタクシーで向かう。タクシーが遅れてきたのでクレームを付けたら料金は発生しなかった。ラッキー

0500登高開始。登山口は標高800m前後で雪は影も形もない。背後に見える八ヶ岳も黒々としており,雪なんてほとんど無いのでは?との楽観論もちらほら。徐々に高度を上げていくと目指す甲斐駒のピークが姿を現す。やはり真っ白だっ
た。横手への分岐を過ぎると左手には鳳凰三山や富士山も見えてくる。
1600mあたりから道は雪で覆われアイゼンを装着。樹林帯をだらだらと登り続けて刃渡りへ。さらに刀利天狗を過ぎて五合小屋跡へ。

準備運動はここでお終い。いよいよ急登が始まる。凍りついた急斜面にアイゼンを効かせながら登っていく。前爪への信頼は広沢寺で既に得ている。重心を足の真上に持って行くとアイゼンがよく効いてくれる。クライミングジムでのスラブ登りと全く一緒だ。クライミングと雪山とのつながりを初めて意識した。

1200頃に七丈小屋にたどり着き荷物をデポ。身軽になってから頂上アタック開始。八ヶ岳を背にして八合目へと登るとアサヨ峰の向こうから北岳が姿を現した。ここからは先は緊張の連続。リッジを渡り,急斜面を攀じ登り,岩を巻く。下りはロープを出さないと無理かもという場所もあった。

9合目からは更なる緊張の連続。ピッケルの石突きも刺さらないほどクラストした斜面を,先行パーティーが刻んでくれたステップを頼りに登る。ステップがなければ敗退かもしれなかった。滑り台のような斜面の登りとトラバースが連続する。滑落したら制動は困難だと思われた。

そしていよいよ登頂。神々しいまでに美しい山々の眺めをしばし堪能する。
森林限界を超えた場所の急降下は眼下に絶景が広がる。危ない場所も後ろ向きなら難なく下れた。壮大な滑り台をトラバースしたり,急斜面を下ったり,シビレっぱなしだが超快適だった。自信がついたのか感覚が麻痺したのか,登ったときには下れないかもと思った場所もロープを出すまでもなく安定して前向きに下りられた。実はこの場所で2週間前に滑落事故で人が亡くなっていたことを後で知らされた。

天候が崩れ始め,軽く地吹雪に晒されながら小屋へ到着した。ヘッ電は使わずに済んだ。まずはビールで乾杯し,チーズ鍋と共に夜は更けていった。

2日目は下るのみ。尾白の湯で汗を流し,帰路に就いた。

総括すると,これまでインドア,剱岳,アイゼントレ,西黒尾根の山行等でたたき込んでいただいた技術や経験を総動員して,スリルを味わいながらもギリギリ安全に快適に登高,下山を果たせたので,非常に有意義なレベルアップの機会となった。
ありがとうございました。

尾根の向こうに富士山が姿を見せた 5合目から甲斐駒を見上げる

 

難所が続く8合目からの道 鳳凰三山を振り返る

 

頂上で。かなりあやしい、「ふ・た・り」…。 頂上から鋸岳

 

天空の散歩 絶景の中を下る

2009.08.29 表銀座

研究室の人々を連れて軽~く縦走のつもりだったが,やはり槍はそんな生やさしい山ではなかった。さらに諸事情により共同装備をほぼ私が持つことになり20kgくらいの荷物を3日間背負い続けたのでかなりこたえた。

天気は良くはなかったが,行動中激しい雨に降られることもなく,景色もそこそこ見ることができた。東鎌尾根を歩いているときに北鎌尾根に雲がかかっていたのは残念だったが,槍の肩に泊まった夜は星空も眺められて長時間露光での撮影を楽しんだ。

8/29
0630 中房温泉
0940 合戦小屋
1100 燕山荘
1140 燕岳山頂
1540 大天荘
夕飯: 鰻丼,麻婆茄子

8/30
0630 大天荘
0930 ヒュッテ西岳
1320 槍の肩
夕飯: ハンバーグ,野菜スープ

8/31
0650 槍の肩
0850 槍平小屋
1230 新穂高温泉

燕岳は砂地でコマクサが群生していた。麓の波田町がスイカの産地なのも肯ける。ちなみに合戦小屋では1/8カットのスイカが800円で買える。あの場所であの甘さならかなりコストパフォーマンスは高いと思われる。

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砂地から岩が生えている燕岳山頂

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大天井岳への従走路から硫黄尾根。左に天井沢も見える。

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従走路から大天井岳。最後の登りが辛かった。

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大天荘テン場から槍・穂高

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大天井岳山頂から北鎌尾根

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東鎌尾根にはトリカブトが多く見られた

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3羽の雷鳥を一度に見たのは初めてかも

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チシマギキョウの群生@槍の肩

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槍の穂先

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30秒露光

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大喰岳に月

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30分露光

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あまりに星空が綺麗だったので穂先へナイトクライミングしてみた。
南側。穂高方面

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北鎌尾根

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頂上でビバークも辞さないつもりだったが,みるみるうちに空が曇ってきたので恐ろしくなってテントに逃げ戻った。下山中に月の暈が見えた。

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翌日。台風の影響か朝から雨だったが下るに連れて天気は回復。笠ヶ岳を西に眺めながら下山。

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2009.08.16-17 ジャンダルム

ichiro

天気の良い日を狙って奥穂~西穂の従走路に挑戦した。最小限の日数にするために,1日目に重太郎新道を白出沢のコルまで上がり,2日目に従走路を走破して下山することにした。
詳細は写真とともに。

16日
0630上高地
0830岳沢ヒュッテ跡
1045紀美子平
1130前穂山頂1200
1400奥穂山頂1540
1500穂高岳山荘

17日
0530 穂高岳山荘
0600 奥穂山頂 0615
0700 ジャンダルム
0830 天狗のコル
0850 天狗岳
1020 西穂高岳 1050
1320 ロープウェイ乗り場

上高地を出発。河童橋から焼岳が綺麗だった。 いつもと異なり河童橋を西穂側へと渡る。明神,前穂,奥穂が一望のもとに見渡せる。朝の上高地は何度訪れても素晴らしい。
岳沢への登山道に至るまでに素晴らしい景色に遭遇した。朝靄と朝日が織りなす光景にしばし心を奪われた。 岳沢から紀美子平までは重太郎新道を登る。5年前に下ったことはあったが登りは初めてだ。好天に恵まれ,眼下には上高地や焼岳そして乗鞍岳の眺めが広がる。

 

紀美子平からはザックを置いて空身で前穂頂上へ。 前穂頂上からは360°の絶景が広がる。前穂北尾根

 

明神岳 奥穂高岳~西穂高岳の縦走

 

そして槍~奥穂の縦走路と涸沢 紀美子平から吊尾根を奥穂へと歩く。振り返ると前穂北尾根の姿が凛々しい。

 

奥穂山頂からのジャンダルム 12. そして前穂と明神を振り返る

 

穂高岳山荘に着いて夕飯時には珍客が現れた。

 

小屋の裏から。夕刻の陽を浴びたジャンダルムの垂壁が圧倒的だ。 前穂北尾根を背景に本日の我が家。

 

夕暮れの白出沢ルート 夕暮れの前穂北尾根

 

17日朝。寝坊した。常念の肩からの日の出と涸沢の夜明けをテン場から望む まずは奥穂への登り。右手には朝日に照らされゆく笠が望まれる。

 

今日も天気は快晴で朝の眺望は最高。手前に前穂と明神,奥には南アルプスと八ヶ岳,さらに奥に富士山 上高地方面。右手に焼岳,左手に六百山,奥に乗鞍,さらに奥に御岳山

 

北方。涸沢岳,北穂,南岳,大喰岳そして天を突く槍。槍の後方左側には鷲羽,水晶,立山,右側には後立山。 さて,それではいよいよ西穂への稜線へと踏み出す。馬の背を行く人が見える。

 

いきなり最も難所と思われる馬の背が現れる。写真は馬の背からコルへの下り。落ちない方が身のためでしょう。 コルから馬の背を振り返る。フレークを足場にクライムダウンする。

 

奥穂山頂を振り返る。 眼前に迫るロバの耳。飛騨側は険しく切れ落ちている。急斜面を巻いたり信州側にのっこしたりしながら登っていく。

 

聳え立つジャンダルム。 私もクライマーの端くれなので,ジャンダルムへは奥穂側から直登した。初めは飛騨側の垂壁を登るのかと勘違いしてとても無理だと思っていたが,実際は写真 のピーク左側の大きな岩があるところを登った。残置スリングもあったが,お世話にならなくてもよく探すと奥の方にガバがあった。5.6くらいか?直登する ことで少し時間短縮できた。

 

ジャンダルムから来し方を振り返る。手前にロバの耳,奥に奥穂。

 

行く末。コブの頭,西穂。 槍はどこから見ても目を引く。

 

前穂と明神のシルエットが美しい。 コルからジャンダルムを振り返る。西穂側から見ると随分と印象が異なる。

 

天狗のコルへと下っていく。 天狗のコルを過ぎると後半戦。出だしからオーバーハング気味の岩場だったがガバだらけなので鎖のお世話にならずとも登れた。写真は天狗岳への最後の登り。

 

天狗岳山頂から笠ヶ岳 間天のコルで出会った雷鳥の親子

 

アップで 間ノ岳から急なガレ場を下りたりいくつものピークを越えたりしながらようやく西穂高山頂へ。

 

もうおしまいと思ったら大間違いで,ここからがとても長かった。西穂山頂を過ぎてすぐに水が底を尽き,山荘では1L200円をけちったために最後の1時間 は脱水が人体に及ぼす影響を人体実験する羽目に。とても辛いので水は多めに持った方がいいということを改めて思い知った。

 

東京都勤労者山岳連盟